生前の相続放棄は不可能|代わりとなる手段を詳しく解説
相続に関わりたくない、借金を家族に残したくないなど、相続に対してネガティブな考え
をお持ちの方もいらっしゃると思います。
中には、相続と一切関わりたくないという方もいるのではないでしょうか。
生前に相続放棄をすることはできませんが、相続放棄に代わる手段があります。
今回は、生前の相続放棄に代わる手段をご紹介します。
◾️生前の相続放棄ができない理由
相続放棄については民法によって定められています。
民法では、相続放棄をする場合は、原則として相続の開始を知った時から三ヶ月以内に行わなくてはならないとしています。したがって、まだ相続が発生していない生前では相続放棄を行うことはできません。たとえ本人の意思を尊重して生前に相続放棄を行おうとしても無効となってしまいます。
◾️被相続人がとれる手段
生前の相続放棄はできませんが、それに代わる手段はいくつか存在します。
まずは、被相続人(財産を残す側)の立場でできることをご紹介します。
⒈生前贈与
生前贈与とは、特定の人に生前に財産を贈与することです。
例えば、自身の介護をしてくれた人に財産を残したい、他の人よりも多くあげたいといった場合に、財産を渡すことができます。
この生前贈与によって得た財産は、後に相続放棄をしても基本的には手元に残しておくことができます。
ただし、相続人の遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額請求を起こされる可能性があるため、注意が必要です。遺留分とは、民法によって定められた相続人が最低でも受け取ることができる相続分です。
また、借金といった負債が財産よりも多い場合に行われた生前贈与は債権者から取り消される可能性もあります。
⒉遺言書の作成
遺言書を作成しておくことで、生前に自身の財産を相続人にどう相続させるか決めておくことができます。
ただし、この遺言書の作成においても遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額請求を起こされる可能性があるため、注意が必要です。
⒊「相続欠格」と「推定相続人の廃除」
相続欠格とは、遺言書の偽造や破棄、隠匿などを行った者に対して相続人の資格を失わせることです。
民法に定められた相続欠格の事由を行った場合、当然に相続人は相続の資格を失います。
これに対して推定相続人の廃除は、被相続人の意思をもとに家庭裁判所の審判によって、相続人から相続権を剥奪できます。
廃除の対象となっているのは、遺留分を持っている相続人のみです。
したがって、遺留分を持っていない相続人はそもそも廃除の対象にならないので、注意が必要です。
廃除にあたる事由は民法によって定められており、例えば被相続人への虐待などが挙げられます。
◾️相続人のとれる手段
次に、相続人(財産を受け取る側)の立場でとれる手段をご紹介します。
⒈遺留分の放棄
相続放棄は生前に行えませんが、遺留分の放棄は生前に行えます。
財産よりも借金などの負債の方が多い場合や、家族仲が悪いため関わりをもちたくないといった場合に、事前に遺留分を放棄できます。ただし、相続そのものを放棄するわけではない点には注意が必要です。
また、相続のなかに借金などの負債が含まれている場合には、その負債は相続されてしまいます。一切、相続に関わりたくないという場合には、しっかり相続放棄を行う必要があります。
◾️まとめ
今回は、生前の相続放棄に代わる手段をご紹介しました。
生前の相続放棄はできないため、それに代わる手段で自身の思い描く相続を達成するしかありません。どれも事前の準備が重要なものであるため、しっかりと対策をする必要があります。
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弁護士吉田 昌史(よしだ まさふみ)
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