相続人に認知症の人がいるとどうなる?相続手続きの進め方を解説
被相続人ばかりでなく、相続人に認知症の人がいた場合であっても、相続手続きに影響が及びます。
そのためどのような影響があるかについて知っておき、適切な対策を立てることは、スムーズな相続手続きのために重要であるといえます。
本稿では、相続人に認知症の人がいる場合の相続手続きの進め方について解説していきます。
相続人に認知症の人がいる場合の問題点
相続人に認知症の人がいる場合、通常の相続手続きとは異なり、いくつかの問題点が発生します。
最も重要な問題点としては、遺産分割協議ができなくなってしまうというものが挙げられます。
相続が開始すると、被相続人の預金口座が凍結され、不動産も処分できなくなるなど、およそ遺産の処分ができなくなります。
この状態は、遺産分割協議によって相続の内容を確定させることで解消しますが、協議の成立には相続人全員の参加・合意が必要になります。
もっとも、認知症などによって判断能力が低下している者は、遺産分割協議への参加ができません。
そのため、相続人の中に認知症の人がいる場合は、遺産分割協議ができず、財産の処分も不可能になってしまうのです。
また、認知症の相続人の代わりに、他の人が代理で遺産分割協議書の署名などを行っても、無効になってしまいます。
他にも、認知症の相続人は相続放棄をすることができないという問題点も存在します。
認知症にかかっている者は、一切の法律行為が不可能であるため、相続放棄により相続手続きから排除することもできません。
また、これを他の相続人が代理で行うこともできません。
相続人に認知症の人がいる場合の相続手続きの進め方
このような問題点がある中で、相続手続きはどのように進めていけばよいのでしょうか。
この場合に採る方法としては、成年後見制度の活用があります。
成年後見制度とは、認知症などの原因で判断能力が低下してしまった者(被後見人)の代わりに、後見人と呼ばれる者が財産の管理などを行う制度を指します。
この制度を使うことによって、後見人が認知症の相続人の代わりに遺産分割協議の参加や相続放棄を行うことができるようになります。
被相続人が死亡する前から後見人が選任されていた場合には、相続開始後直ちに遺産分割協議をすることができます。
もっとも、相続開始後にはじめて後見人の選任申立をする場合には手続きに1~3ヶ月程度の時間がかかるため、できる限り早く後見人の選任や申立てを行うことが大切です。
もっとも成年後見制度には難点も存在します。
まず、法定後見の場合親族ではなく専門家が後見人に選ばれる可能性が高い点が挙げられます。
後見人は家庭裁判所によって選任されますが、近年では第三者である専門家が後見人に選任されやすいです。
そのため、意図しない者が後見人になってしまうリスクがあります。
加えて専門家が後見人になる場合には報酬を支払う必要が発生するため、被後見人が死亡するまで高額の報酬を払い続けなければならない可能性があります。
次に、他の相続人の思い通りの相続が難しくなってしまう点が挙げられます。
後見人としては、被後見人の財産を保全する必要があるため、例えば認知症の相続人がすでに多くの財産を所持していることを理由に他の相続人に遺産を多く分配する、といった柔軟な相続の実現が難しくなってしまいます。
相続については吉田法律税務総合事務所までご相談ください
相続人に認知症の人がいる場合には、成年後見制度を活用していくことになります。
もっとも、この制度にも難点は存在するため、被相続人が生前に遺言書を作成して遺産分割協議の必要をなくしておく、家族信託や生前贈与の活用を行うなどの形で事前に対策をしておくことをおすすめします。
相続人に認知症の人がいる場合の相続手続きなど、相続についてお悩みの場合には、法律の専門家である弁護士への相談をおすすめします。
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